日向農協モナコ観光不正融資事件裁判/平成19年11月追加融資

平成19年2月福良参事は、参事から審議役、4月26日に常勤監事に就任した。執行部から外れたということは、何か組織内でうまくいかなかったのかも知れない。一方、川村副組合長は、逆に4月26日に組合長に就任した。

前項で見たように、モナコ観光の経営は、平成19年に入り坂道を転げ落ち始めていた。3年前(平成16年)に予定通り2億円の繰上償還をさせておけば、大きなリスクが残ることはなかったが、そのリスクが現実のものになろうとしていた。

恐らく、モナコ観光から7200万円の追加融資の申込があったのは、平成19年10月ではないかと推測するが、10月末時点で、貸付残高は、まだ3億1800万円もあった。ここで7200万円の追加融資をすれば、貸付残高は3億9000万円に後戻りする。

しかし、日向農協は、顕在化しつつあるリスクに気づかなかったのか、余程貸出先に困っていたのか、償還期限の5年延長という条件変更と7200万円の追加融資を強引に決めようとした。

11月6日理事会で、次のようなやり取りが交わされた。

Y理事「今回7000万円を運営資金として上乗せして3億9000万円に増やすということであるが、約束事を守っていないという事実を組合長も知っていると思う。そのような方にまた貸付をして増えるような状況である。決算(計画)では、差引収益で平成18年2900万円、平成19年9100万円という金額が出されている。これだけの収入があるのに7000万円を運営資金として申し込むということは、この(計画)数字が信用できるものなのかと思う。以前に議論されたことが脳裏にあるので、既貸付分の返済にだけ努力してもらいたい。高鍋信用金庫への返済の肩代わりではないかというような感じも見え隠れする。そのようなことから、今回の貸付には賛成できない。」に対して、
川村組合長「当初4億8000万円を融資し、若干の繰上償還もあったが、期日を守り5年間で元金1億7000万円と年間1000万円程度の利息を支払ってきた実績もある。」

M理事「4億8000万円を融資して期限が15年あり5年しか経過していないのになぜ再度(7200万を)合計して融資するのか。」に対して、
中田常務理事「信用事業では年間7億8000万円の収益を見込んでいるが、信用事業2000万円、共済事業に1000万円の上乗せをして残り3ヶ月間努力するように事業進捗検討会で説明したところである。信用事業を伸ばすためには融資を伸ばさなければならないので、リスクはあるが、これまでの経過等を見て取引していきたいと考えている。」、
福良監事「当初の担保評価よりも今回の担保評価は下げており厳密になされていると感じる

Y理事「(今回新たに)貸せないのであれば次の支払ができないような不安経営をさせて膨らませるような貸付の増額はどうかと思う。」に対して、
川村組合長「Y理事の言われることはもっともであると思うが、企業は黒字でも資金を止めると血液と同じで倒産する。JA日向が融資しないと止まってしまうので、今回認めていただき後で条件を付けてもよいのではないか。」

M理事「担保物件についてであるが、借地の上の店舗の評価は0円よりも低いと思う。解体するのには費用がかかる。」、
O理事「積立を全部解約したということを耳にしたが本当なのか。(中略)だから、経営的にかなり厳しいのではないか。他の運営資金が足りないのではないかと心配する。(平成19年10月17日積立金1500万円解約)」に対して、
川村組合長「中身については経営的にはしっかりしている。このような事業は資金繰りが絶対に必要である。今度は、毎月積み立てて半年に1回支払っていたものを毎月に変えるので、残高が毎月減ることになる。」

O理事「この貸付は道路拡張の補償金で払うということで当初は貸した。その当時の部長が、最終的にはいってきたら全額繰上償還になるのではないかと言っている。6月一杯が補償金の期限だと言っている。ところが、監事が調べたところによると1月に補償金は全額入っており、貸付金に充当すべき金額を勝手に借入者が払いだしているという経過がある。」に対して、
福良監事「以前の話ばかり出ており、議論がずれている。若干担保不足気味ではあるが、当時の組合長まで決済を受けて実行していた。平成16年の理事会で、このことは理事会に附議しなければならなかったのではないかと問題になり、その時は既に非常勤となっていた池田金五郎理事が謝罪をした。私はそこで解決していると思っている。担保は足りているとの認識からこの問題はスタートしていると思うそれ以前の話をしたら難しくなるのではないだろうか。」

M理事「借換えにより3億9000万円をこの理事会で承認し、もしもこれが焦げ付いた時はここにいる理事が責任を負わねばならない。ここで7000万円を承認すれば、この金額についてのみ責任を負うわけであり、3億2000万円については前の理事の責任になる。」に対して、
川村組合長「今後は3200万円程度の支払でないと厳しいということなので、新たな7000万円を決定して頂き、既貸付分の償還期間を5年間延長していただければ差し支えないと考える。採決を行いたいと思うが、宜しいか。」

Y理事「今度貸したら支払ができないというのは、当初の優良企業という説明と矛盾していると思う。成り立たない人にまた融資して、期限も延ばして心配を増やすのか。」に対して、
川村組合長「先程から言っているとおり、この企業も3億2000万円で資金が回転すればよいが、諸々の支払等もあり厳しいと思っている。そのようなことを考えると、支払のできるような状態にしなければ延滞等が発生しても問題になると思うので、資金運用のできる内容としたい。他に意見がなければ、既貸付分の5年間の償還期限延長と新規に7200万円の融資を行なうことに対して採決を行なう旨を告げる。」

というように、議論は延々と平行線を辿り、痺れを切らした川村組合長は強引に採決に持ち込んだ。
因みに、モナコ観光は、追加融資申込に際して、「年間資金計画表」を提出している。前述したように、申し込んだのは10月だから、平成19年は残り2ヶ月間しかない。(12月決算)そこには、平成19年売上予定21億8000万円、差引収益9194万円と記載されている。

ところが実際は、売上14億9574万円、当期利益250万円である。
つまり、この「年間資金計画表」の数字は、真っ赤なウソである。決算月の2ヶ月前に、7億円も予想売上をさば読んで(上乗せして)融資申込書に添付していた。
また、本店審査会には、少なくとも平成19年9月末の残高試算表が提出されていた筈だから、3役(川村組合長、尾形副組合長、中田常務)、金融共済部長、課長、福良監事は、平成19年の決算予想数字と「年間資金計画表」の数字が、まったく異なることを知っていた筈である。

モナコ観光の経営実態を隠して理事を騙し、回収が危うい7200万円の追加融資を採決したことになる。

こうして、平成19年11月15日、7200万円の追加融資が実行された。
本店審査会で、どのような内容の検討がなされ、どのような理由で融資が決定されたか定かではないが、正直私には理解不能である。この時点で危険な兆候は明白に出ていた。経営の見通し及び回収の見通しが余りに楽観的過ぎる。

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