第2章 デフレ不況に見る日本社会の問題1国民総生産と所得

前述したが、私は学者や専門家ではないので、国民の一人として、インターネットで入手できる資料を用いて、肌感覚で論評をしてみたい。

まず、ユーチューブに度々登場する京都大学藤井聡名誉教授による、衝撃的資料が以下のグラフである。

小さくて恐縮だが、1995年から2015年までの20年間の名目GNP成長率グラフである。ご覧の通り、37か国中マイナスは日本だけ、ダントツの最下位である。一目瞭然で、日本だけが、経済成長をしなかった、奇跡的な国だということが分かる。
分かり易く言うと、1995年以降、日本国民は、一部の人を除いて、ほとんどの人が豊かになれなかったことを示している。1990年のバブル崩壊の影響がなかったとは言わない。しかし、当時「失われた10年」という言葉が使用されたように、その直接の影響は、せいぜい2000年までである。

このグラフが示しているのは、日本の経済政策が、根本的に間違っていたということだ。人口が減少に転じたのは2017年のことだから、人口は理由ではない。経済政策が理由である。

□資料1「主要国名目GDP」

□資料2「主要国一人名目GDP」

□国民負担率

次に、資料1と2は、名目GDPを国際比較した統計表である。スペースの制約から、途中2009年から2013年の5年間を省略した。まず、資料1について、2017年から2005年の差額を2005年の金額で除して伸び率を計算すると、トップ3は、中国435%、インド221%、ブラジル131%、ワースト3は、日本2%、イギリス4%、イタリア5%と、日本は最下位となった。一方アメリカは、49%と名目上はかなりの伸び率を維持し、ある程度経済運営が上手くいっていることが示されている。日本の場合は、何と言ってもデフレ不況がそのまま現れている。

また、世界に占める比率で見ると、アメリカは、3.4%下がったが1位を維持し、中国が10.3%増、日本は、4%減の6%となり、国際的な地位を確実に下げている。つまり、日本が2005年から2017年の12年間、ほとんど経済成長していない間に、世界各国は成長と転換を進めてきたことを意味している。

次に、資料2について、一人当たり伸び率で見ると、アメリカ36%増、カナダ24%増、ドイツ27%増と手堅く伸びており、OECD中の順位も、6位、13位、14位と安定している。比較すると、日本は、3%増の20位で14位から6つ下がっている

見たとおり、日本の経済の悪化は数字にはっきり表れている。そして、この悪化の原因を検証したなら、まず第一に、政府の経済運営、すなわち、財政政策および産業政策に原因を求められるだろう。具体的には、財政健全化を優先させ、デフレであるにも拘わらず、投資と消費を抑制する政策を採ったことに尽きる。

風邪をひいて弱っている時に、おかゆと山菜でしのいで、回復する力がなくなったようなものである。これは、人災である。

また、この人災の影響は、国民生活に、総合的に甚大に及んだ。マクロベースで見ても当然ピンと来ないのが当然だが、ひとつだけ注目して欲しい数字を紹介する。
それは、「国民負担率」といい、税負担+社会保障負担の合計が、国民所得の何パーセントに相当するかを表す値である。つまり、例えるなら、国民所得は給与収入額であり、そこから、所得税、住民税、固定資産税などの諸税と社会保険料の合計額を差し引いた残りが、いわゆる可処分所得となる。一般的に、給与所得者が自由に使えるお金、すなわち、生活をするために、衣食住と教育や趣味や娯楽や貯蓄に投じることができるお金は、この可処分所得になる。

したがって、マクロベースで言うなら、国民所得から税負担+社会保障負担の合計を差し引いた残りが、直接国民が自由に使えるお金ということになる。
表の調度真中の「国民負担率」を見ると、平成26年以降40%を上回っているのは、税負担で約2%、社会保障負担で約1%増加しているからである。つまり、平成26年(2014年)は、消費税が5%から8%に増税された年である。
簡単に言うと、所得は増えていないのに、負担だけ増えた。資料1,2とこの「国民負担率」の増加は、そのことを示すている。
つまり、この「国民負担率」は、国民生活を圧迫する値として見ることができる。(公的サービスの増減を無視した場合の話です。)そして、今後少子高齢化の社会構造は不変だから、「国民負担率」を下げることは、可能ではあっても現実的にはないだろう。
そうすると、豊かさの実現方法は、一人当たり国民所得の絶対額を上げること、つまり、経済成長であり生産性の向上である。
やるべきことは、はっきりしている。にも拘わらず、その明確な課題から目を逸らし、30年間も的外れの、と言うより経済成長という当たり前の健康を求めず、緊縮財政という体力低下を促進する政策を繰り返してきた日本政治は、悪い医者にかかって、薬漬けで殺されることと同じ結果を招いたと言って過言ではない。

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