モナコ観光不正融資事件の真相!第4話「判例検証」

私が、本件不正融資についての提訴を検討する上で参考とした判例がふたつありました。

平和相互銀行事件(平成10年11月25日最高裁決定)

Eは、売買代金の60億円の他、開発資金20億円及び利払い資金の融資も希望しているが、融資の物的担保としてはb物件があるのみで、その時価は60億円に止まり、D、Cの経営者等が連帯保証するとは言え、希望通り融資すると、担保が大幅に不足することが明らかであった。このような融資を実行することがA銀行の融資事務取扱要領等に違反することは明らかであり、右融資を実行すれば融資金の回収が困難に陥る恐れがあることも明らかであった。

被告人及びHらは、本件融資が、D及びCに対し、大幅に担保不足であるのに多額の融資を受けられるという利益を与えることになることを認識しつつ、あえて右融資を行うこととしたことが明らかである。そして、被告人及びHらには、本件融資に際し、A銀行の利益を図るという動機があったにしても、A銀行にとって極めて問題が大きい本件融資を行わなければならないという必要性、緊急性は認められないこと等にも照らすと、それは融資の決定的な動機ではなく、本件融資は、主としてB、D及びCの利益を図る目的をもって行われたということができる。そうすると、被告人及びHらには、本件融資につき特別背任罪におけるいわゆる図利目的があったというに妨げなく、被告人につきHらとの共謀による同罪の成立が認められると言うべきである。

北海道柘植銀行事件(平成21年11月9日最高裁決定)

銀行の取締役は、融資業務の実施に当たっては、元利金の回収不能という事態が生じないよう、債権保全のため、融資先の経営状況、資産状態等を調査し、その安全性を確認して貸付を決定し、原則として確実な担保を徴求する等、相当の措置を取るべき義務を有する。

これを本件についてみると、既存の貸付金の返済は期待できないばかりか、追加融資は新たな損害を発生させる危険性のある状況にあった。被告人A及びBは、そのような状況を認識しつつ、抜本的な方策を講じないまま、実質無担保の本件各追加融資を決定、実行したのであって、上記のような客観性を持った再建・整理計画があったものでもなく、所論の損失最小化目的が明確な形で存在したともいえず、総体として、その融資判断は著しく合理性を欠いたものであり、銀行の取締役として融資に際し求められる債権保全に係る義務に違反したことは明らかである。そして、両被告人には、同義務違反の認識もあったと認められるから、特別背任罪における取締役としての任務違背があったというべきである。


尚、訴状は受理され、第1回口頭弁論は、平成30年1月18日午前11時30分、宮崎地方裁判所延岡支部2号法廷にて、訴状に対する認否がなされる予定です。

訴訟告知書

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