モナコ観光不正融資事件の真相!第3話「本質的原因は形骸化した理事会」

この事件の原因はいくつも挙げられるが、その中でひとつだけ挙げろと言われたら、「形骸化した理事会」である。
理事会は、本来農協における実務上の意思決定機関なのだが、95%形だけの、存在意義のない、役割と責任を果たせない機関になっている。
そして、その責任の全ては、一部の経営陣にある。
その究極の結果が、本事件である。
だから、私は、確信を持って2名の元組合長を訴えた。
読者の皆さんには、本シリーズの最後に、私が言っている意味が納得いただけるだろう。

さて、農協の監督機関である農林水産省から「系統金融機関向けの総合的な監督指針」というガイドブックが発行されているが、その一部から引用する。

経営管理(ガバナンス)
経営管理態勢のモニタリングに当たっては、例えば、以下のような着眼点に基づき、その機能が適切に発揮されているかどうかを検証することとする。
なお、検証に当たっては、系統金融機関についてこれまで経営の健全性が損なわれた事例の一部を見ると、「特定関係者による実質的な経営支配」、「経営トップによる長期・過度なワンマン経営」、「非農林水産業向けの特定大口先の融資拡大」、「体制等が不十分な状況下での有価証券の運用」、「相互けん制体制の欠如」等の弊害が明らかになっていることに留意するものとする。

理事及び理事会
理事は、業務執行にあたる代表理事等の独断専行をけん制・抑止し、理事会における業務執行の意思決定及び理事の業務執行の監督に積極的に参加しているか。
理事は、法令等遵守態勢、リスク管理態勢及び財務報告態勢等の内部管理態勢(いわゆる内部統制システム)を構築することが、自身の善管注意義務及び忠実義務の内容を構成することを理解し、その義務を適切に果たそうとしているか。

ガイドブックには、実に重要なかつりっぱな指摘や指針が列挙されているが、日向農協では、とりわけまさに上記内容が骨抜きにされ、実際は絵空事になっている。

すなわち、実際は、特定関係者による実質的な経営支配がなされ、経営トップによる長期・過度なワンマン経営であり、モナコ観光という非農林水産業向けの特定大口先の融資拡大が推進された。

したがって、理事は、業務執行にあたる代表理事等の独断専行をけん制・抑止しできず、理事会における業務執行の意思決定及び理事の業務執行の監督に積極的に参加していない。
また、理事は、法令等遵守態勢、リスク管理態勢及び財務報告態勢等の内部管理態勢(いわゆる内部統制システム)は構築されておらず、自身の善管注意義務及び忠実義務を適切に果たすことはできない。

だから、3億262万8579円という巨額損失は、必然的にもたらされたのだ。
本シリーズをご理解いただく上で、この特徴的な実態が常に事件の進行に影響を与え、問題の深刻化を招いてきたことが決定的要因であることに間違いない。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク