モナコ観光不正融資事件の真相!第11話「判決前報告その4経営責任」

第4 経営責任

1 被告福良氏

(1)福良氏については、参事時代に法的経営責任がないこと、監事としては執行権がないことの抗弁があった。それはそれとして、考慮しなければならないが、今一度本質的な経営責任を検証する。

まず、巨額損失の直接の引き金は、2億円の繰上償還が行われなかったことに端を発している。平成16年2月1日に福良氏が参事に就任後、この問題は、2億円の繰上償還路線から担保不足解消のための担保評価偽装へと舵が切られた。

福良氏は、2億円の繰上償還の問題を、「3月の理事会の以降で、こういうのがあったんだなというようなことを初めて知りました。」と述べているが、2月、3月と2回の理事会を経るまで知らなかったとは、非現実的な話である。参事という職員のトップに就任したら、まず重要案件の把握に努める筈だから、大幅な担保不足のまま2億円の繰上償還が放置されていることを2ヶ月も把握しなかったとは考えられない。

6月に予定されていた最後の補償金入金で、約定どおり2億円の繰上償還をさせるか、貸出残高を減らさないために繰上償還をしないか、もしくは繰上償還額を下げるかを検討して、後者を選択したのだ。そして、それには担保評価偽装が必要だった。

また、この大それた工作は、参事である福良氏の同意なしにはできなかったから、福良氏が中心的役割を果たしたことは間違いない。そうすると、後に常勤監事、組合長、中央会会長に登り詰めた福良氏の参事時代の責任を問わないなら、それは、ドーピング違反をした選手の金メダルを剥奪しないことと同義になり、一般社会通念上、受け入れられない判断であろう。

(2)福良氏は、平成19年4月26日に常勤監事に就任した。監事監査は、上期(9月)と下期(3月)の年2回行われるので、平成19年は、9月に一度自ら監査を実施した後、11月に7200万円の追加融資の検討が行われた。

その是非を問う11月6日の理事会において、「当初の担保評価よりも今回の担保評価は下げており厳密になされていると感じる。」と述べた福良氏だったが、尋問では、「職員から聞いております。(中略)そういう意味で、厳密にされてますという回答を私はしていると認識しております。」と、その趣旨を説明している。

「厳密になされている」とは、職員の受け売りだった訳である。

(3)平成20年11月28日の2000万円追加融資、及び12月10日7200万円ひょっとこ苑融資については、そもそもが、いよいよ破綻前夜の経営状態である企業に貸し付ける無謀な融資案件だったが、見てきた通り、2000万円は組合長単独決裁で貸し付け、その償還資金2000万円を含む7200万円ひょっとこ苑経由迂回融資というのが実態だった。

また、ふたつのセット融資のスキームにおいては、手形不渡りを避けるための2000万円追加融資は初めから確定しており、その短期での回収を確実にするには、ひょっとこ苑向け7200万円融資を成立させる必要があった。

したがって、平成20年11月26日理事会は、初めに結論ありきの内容で議事が進められた。金融共済部長、常務、川村組合長、福良監事、全員一致団結して7200万円融資を成立させた。「融資ですので、私はノータッチでございます。(福良氏)」とは、事実と全く異なる言い逃れに過ぎず、論外である。

(4)そうすると、福良氏が監督指針記載の「組合内の経営管理態勢及びその運用状況を日常的に監視・検証」をしていない、すなわち甚だしい善管注意義務違反であることは、火を見るより明らかである。

2 被告川村氏

(1)平成16年4月6日理事会で、「平成16年6月が国から最終的に支払われる期限であるのでその時点で適正に処理したい。」と述べていた川村氏は、4月28日に副組合長に就任後、福良氏と協力して担保評価偽装をし、繰上償還額を下げたが、それが川村氏の言うところの適正な処理でなかったことは、後の巨額損失が実証している。

(2)川村氏は、平成19年4月26日に組合長に就任し、平成19年11月の7200万円追加融資、組合長単独決裁による平成20年11月28日2000万円追加融資、さらに12月10日7200万円ひょっとこ苑融資と、損失額を拡大させる中心的役割を果たした。

理事会決議違反を含むこれらの行為は、最早役員としての通常の業務執行の範囲(業務執行の通常性)を逸脱していたことは明らかであり、それどころか、火に油を注ぐ任務違背行為だったことを否定することはできない。

3 総括

農協という公共性が高い、地元にとってなくてはならない農業という基幹産業を担う、地域密着型企業を舞台に起こった本件不良貸付事件においては、そこに、公共性と相反する要素、農協の社会的使命とかけ離れた価値観、組合員の支援とは無関係な利益追求を優先する安易な経営判断などが、主役と準主役を動かす異常な世界が繰り広げられた。

したがって、主役である被告川村氏と準主役である被告福良氏は、ある意味、農協のアイデンテティを忘れ、生々しい俗人的世界の住民となり、原理原則から遠く離れたところで、パチンコ店の支援を通じ、結果的に、事業者支援と不良貸付の境を見失い、無自覚に突き進んで行った。

その行き着いた場所が、組合員だけではなく、本人達にとっても望んでいなかった巨額損失という荒涼とした風景だったことは必然でもあった。そして、今更巨額損失という事実を変えることはできず、できるとしたら、この好ましくない事実から眼を逸らさず、組合員と共に農業を振興し、国民生活に寄与するという本来の農協の姿に帰ること以外にはない。

その大義のために、狂った不良貸付劇の主役と準主役に対して、組合員が納得する処分を課すことは、避けて通ることができない再生への過程である。われわれ組合員、農協職員、関係者、地元住民の皆が、たとえ何年経とうと、本件不良貸付事件によって被った巨額損失と失望感をもたらした責任を帰すべき者を確かめたいとの思いを、決して忘れてはいない。そして、責任者が相応の処分を受け入れた時、始めて本当の再生がスタートする。

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